田舎での幼少期と愛犬

私は10歳の夏休みから少しの期間、家族の都合で母方の実家に母と身を寄せていたことがある。10歳というと、もう物心もついていたし人見知りもする多感な時期であったと思うが、その実家には母の兄弟夫婦と祖母と祖父も住んでいた。夏休みのある日、母の兄がジャスコに入っているらしいペットショップで子犬のパピヨンを買って帰ってきた日がある。

それは10歳の私にはかなりセンセーショナルな出来事であり、退屈な田舎の夏休みに飽きてきた頃には話題性は抜群だった。当時はイオンではなくジャスコで、車でなければ行けないジャスコは廃れていたし、プリクラだって東京で古くなったものがこっちに来たような感じで、お世辞にもワクワクするようなショッピングモールではなかったが、白い子犬のパピヨンはとてつもなく可愛かった。

初めての動物と暮らすという体験だった。そのパピヨンは母の兄がハッピーと名づけ、パピヨンらしくゲージを飛び越えそうな勢いで人懐こく飛び回っていた。
実家に来た初日はかなり興奮していて、夜中に私と母の眠る布団の周りを駆け回り、驚き悲鳴を上げた私が寝室の灯りをつけると、ハッピーは胸元を赤くしながらも元気に飛び回っていた。ゲージを飛び込えようとして血が出ていた。そんな事件もあり、祖父母や母の兄からはバカ犬呼ばわりされていたハッピーを私はかなり好きだった。男の子ばかりの親戚と遊ぶよりも楽しかったし、田舎道をリードをつけて散歩するのも楽しかった。

元の家に戻る際に、母の反対を押し切ってハッピーを自宅に連れて帰ることにして、飛び回って番犬にはとてもじゃないけれどなれないようなハッピーとの生活はそれから8年ほど続いた。ハッピーは死ぬまで愛嬌のある犬だったが、いつからか血尿が出るようになり、体調を崩して亡くなった。ちなみにメスだった。私の10代、青春はハッピーと共にあったようなもので、写真や動画が沢山残っているため寂しくはない。

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