生まれたときから我が家には犬がいました。私より4歳年上のビーグル犬のロッキーです。犬だけど一匹狼のような、スンとした顔で媚びない性格のなかなかクールな犬でした。
家族の中で唯一ロッキーより年下な私は、ロッキーの中の格付けでもおそらく最下位。私に対してはなおさら塩対応の彼を追いかけながら遊んだ幼少期でした。
スンとした顔で隙をついて家族の夕飯のおかずを勝手に食べてしまったり、土の中に隠した泥だらけのパンを大事そうに掘り起こして食べたり、脱走して家族総出で慌てて探しに行ったら隣の家に間違えて帰ってきていたり、クールなだけでなく家族への話題もたくさん提供してくれました。
そんなクールでときどきわんぱくなロッキーだったけれど、歳を重ねるごとに少しずつ丸くなっていきました。私には絶対に前を歩かせてくれなかった散歩も、並んで歩かせてくれるようになり、次第にゆっくり歩くロッキーを少し待ちながら歩くようになりました。
晩年には初めて抱っこもさせてくれました。ロッキーが噛みつこうとせずに腕の中に、膝の上にいるなんて年老いたのを実感して少し寂しいけれどすごくかわいい…!という感情を抱いたのを覚えています。子犬ってもちろんかわいいけれど、じいさん犬も負けないくらいかわいいんですよね。
私が中学2年生の夏、ロッキーは18歳で旅立ちました。生まれたときから一緒に生活した家族がいなくなる。当たり前にいたものがいなくなる。大事な人を亡くした場面でよく耳にする、「心にぽっかり穴が開く」という表現、きっとこれがその感情なんだなと初めて理解できた気がしました。
もうこの毛並みに触れなくなると思うと、その感触を忘れたくなくて、少しずつ冷たくなっていくロッキーの身体をたくさんたくさん撫でました。
一緒に歳を重ねてくれて、私を動物好きにしてくれてありがとう、ロッキー。あなたのおかげでいろんな生き物に出会えて人生が豊かになりました。